寒い季節、おなべやおでんなどにかかせない大根。そんな大根を主人公 にした、民話調の絵本をご紹介します。 |
村の守り神となった、不思議な大根のお話 |
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絵本を持つ、村上椛々(もも)さん(小2) 「だいこんどのむかし」 渡辺節子 ぶん・ニ俣英五郎・え ぽるぷ出版 刊 |
「いっすんぼうし」や「うらしまたろう」、「かちかちやま」 など、どんな人にも、忘れられない昔話があることでしょう。そしてそれらは、両親や祖父母たちのずっとずっと前から語り継がれて きた、「日本人の心のふるさと」とも言えるお話です。そんな民話をもとにした、不思議な大根の絵本があります。 昔々、ある村で青物が不作の年、たった一つだけ、小さな大根の芽が出ました。村人たちはとても喜んで、みんなで水やこやしをやり、一生懸命世話をし続けます。すると大根はにょ にょき大きくなって、収穫の秋、大勢で綱をかけひっぱっても、引き抜くことができません。実はこの巨大な大根は、人間の言葉を話せる、不思議な大根だったので、村人たちは、浮いて食べるのをやめました。そしてみんなが「だいこんどの」と呼び大切に扱うと、この大根はすば らしい霊力を発揮し始めます。ふさふさとした長い長い葉を屋根のように広げ、村を災害から守るのです。だいこんどののおかげで、嵐の大雨もふぶきの大雪も、村には入ってこなくなり、おだやかで平和な暮らしが続きました。 |
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暑い夏の日には、緑の葉っぱが作る涼しい木陰(こかげ)で、村の子どもたちが遊びます。真白い顔で目を細めて、子どもを見守るだいこんどのは、とても嬉しそう。こうして村人たちは、いつまでも幸せに暮らしました・・・といかないところが、この絵本の面白さです。たとえば、「つるのおんがえし」の結末を思い出してみてください。つるを助けた若者は、つるにょうぼうの織った反物(たんもの)を売り、大金を得ました。欲に目がくらみ、しだいに優しさを失っていきます。村人たちも同じです。 はじめこそ、だいこんどのに感謝していましたが、だんだんその気持ちも薄らいでいきます。なぜなら、だいこんどののだいじな葉っぱを、いつもふさふさにしておくためには、たくさんのこやしが必要だったからです。大嵐も大雪も来ない生活も、なれてしまえば当たり前。村人たちは毎日せっせとこやしを運ぶ生活がめんどうになり、だいこんどのがうとましくなってきました。 そしてついに、むだめしぐい、食っちゃ寝の役立たずとののしり、だいこんどのを村から追い出してしまいます。さあ、それからがたいへんです。以前よりずっとひどい大嵐や大雪にみまわれ、さんざんな目にあった村人たちは、だいこんどのをさがしまわります。けれども、どんなに帰って来てくれとさけんでも、 だいこんどのは二度と村にもどっては来ませんでした。 今も昔も、人間には実に浅はかで愚かな面があり、その普遍性こそ、民話が現代にも生き続ける由縁でしょう。 いったいどうすれば、だいこんどのは幸せで、村人たちも困らなかったのか、子どもたちの読後感を聞くのも楽しみな絵本です。 (文・平野誠子) |
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折り紙作品 大根 |
大根の豆知識 |
アブラナ科の大根は、肥大した根の部分や葉を食用する野菜です。大根は古くは、大きな根を意味する「おおね」と呼ばれてきました。生でも煮ても焼いても、また漬物や乾物にしてもおいしい大根は、日本の食卓にはかかせない野菜です。大根の葉にはビタミンAが、汁にはビタミンCが含まれています。改行昔から「大根役者」という言葉が使われてきましたが、これは大根がどんなふうに調理しても食あたりしないことを、何を演じても当たらない役者にたとえた言い方 だそうです。改行紀元前2000年ほど前のエジプトでは、ピラミッドの建設労働者が 大根を食べていたとされ、 日本に大根が入ってきたのは、弥生時代と言われています。 |
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食の折り紙掲示板 「大根干し」 |
健学社様の月刊「食育フォーラム」で、隔月で「食の折り紙掲示板」を連載していました。その中から「大根干し」のタイトルの作品をご覧ください。大根が折紙作品、その他はイラストです。 |
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「大根干し 」 折り紙作品/大根 |
新鮮でみずみずしい大根をたくさん収穫したら、ふさふさの葉っぱを切り落として、大根干しの作業に取りかかります。庭先の大きな木の枝に何本も吊り下げて、冬の味覚、おいしい干し大根を待ちましょう。はらはらと舞い散った秋の枯葉は、こげ茶・茶、黄、黄土など、 いろいろな色で塗ってください。大根の葉にも、緑や深緑など、異なった緑色の折り紙を使いましょう。 |
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